抄録
我々は最近組織学的に構造異型を伴った虫垂のcystadenomaの1例を経験した. 71歳女性で虫垂炎の診断にて開腹し,虫垂粘液嚢胞の診断を得た.回盲部切除を施行した.虫垂粘液嚢胞は一部粗〓で, 12×5×5cm,壁は弾性硬で黄白色光沢性を有していた.内部にはゼラチン様物質が充満し,その内面は黄白色粗〓であり,盲腸内腔と虫垂嚢胞内腔とは交通が認められた.病理組織学的には, cystadenomaの一部に構造異型を認めdysplasticな変化を伴ったcystadenomaと診断したが, carcinomaのpotentialを持つ可能性が考えられ興味がもたれた.症例の概略について報告するとともに病理学的に,および治療法に関連し文献的に考察を加えた.