抄録
血栓により閉塞していたにもかかわらず,破裂死した細菌性腹部大動脈瘤の1症例を報告する.
63歳,男性.腹痛,発熱,下痢にて来院.偶然,総胆管結石症が認められたため,胆のう摘除術・総胆管切開・Tチューブドレナージを施行した.しかし手術後,上記症状の再燃をみたためCTを施行.腹部大動脈瘤を認めた.超音波・血管造影にて,上腸間膜動脈分枝直下からの腹部大動脈瘤で,血栓にて閉塞しているもの,と診断された.保存的に経過観察していたが,破裂の疑い濃厚となり緊急開腹した.巨大な細菌性動脈瘤であったが,切除はなし得なかった.手術後3日目,大動脈瘤・十二指腸瘻を形成し,出血死した.原因菌はE. coliであった.
通常の動脈瘤は血栓にて閉塞すると,破裂の危険は著しく減少する.これに対して,細菌性動脈瘤は血栓にて閉塞しても,自然治癒する事はほとんど無く,血栓内に感染が持続し,やはり破裂に至る.との記載がある.
本症例の病理組織像においても, #1. 動脈壁の壊死は血栓より中枢側まで進展している, #2.血栓は膿瘍と混在し,感染巣となっている,の2点が認められ,細菌性動脈瘤の場合には,血栓は動脈瘤破裂を予防し得ない事を示唆する所見が得られた.