抄録
大網捻転症は比較的稀な疾患であり,私達は鼡径ヘルニアに合併した1例を経験したので報告する.
症例は, 60歳,男.右下腹部痛を訴え来院した.右鼡径ヘルニア嵌頓の診断のもとに開腹した所,中等量の血性腹水と順時計方向へ360度捻転し血行障害に陥った大網を認めた.捻転部にて切除した大網には腫瘍所見はなく血管拡張,出血壊死,軽度炎症細胞浸潤を認めた.
本邦では,大網捻転症は自験例もあわせて57例報告され,その中で特発性が13例(23%), 続発性は40例(70%),不明4例であった.本症は臨床的に特徴的所見に乏しく診断が困難であり, 57例中42例(74%)が急性虫垂炎と術前診断されており,術前に確定診断された症例は1例もなかった.治療は絞扼大網を健常部にて切除する必要がある.