日本臨床外科医学会雑誌
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進行性肺癌における大動脈合併切除と血行再建
清水 康廣久保 義郎岡野 和雄松前 大今脇 節朗今吉 英介金藤 悟清水 信義内田 發三寺本 滋Hideki KURIHARA
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1986 年 47 巻 1 号 p. 46-51

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抄録

胸部大動脈に浸潤を有する進行性肺癌に対して,一時的バイパス下に大動脈合併切除と血行再建を行い,良好な手術成績をえた2症例と経験したので報告する.
症例1は62歳男性,左肺門部腫瘤で主気管支狭窄と下葉の無気肺を有し,胸部CT上大動脈への浸潤が強く疑われた.左肺全葉切除とともに大動脈合併切除を行い,ダクロングラフト移植を行った.病理組織所見は,扁平上皮癌で,中膜までの浸潤を認めた.術後経過は良好であったが,術後12ヵ月目に急性肺炎で死亡した.
症例2は64歳男性,左上葉に腫瘤を有し,胸部CT上大動脈浸潤が疑われた.左上葉切除とともに大動脈と左鎖骨下動脈の基始部を合併切除し,大動脈は直接端々吻合により血行再建した.病理組織所見は,腺癌で浸潤は外膜に限定していた.術後経過は良好で,9ヵ月経過した現在も元気で日常生活を送っている.
進行性肺癌で大動脈に浸潤があっても,根治性が期待でき準治癒切除が可能な症例に対しては,積極的に大動脈合併切除を試みてもいいと考える.

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