日本臨床外科医学会雑誌
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骨盤内腹膜後隙に発生した非定型血管外皮腫の1例
羽田野 隆霞 富士雄北川 知行
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キーワード: 血管外皮腫
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1986 年 47 巻 1 号 p. 92-96

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抄録

組織学的には非定型的であるが血管外皮腫の骨盤内腹膜後隙発生例の1治験例を経験し若干の教訓を得たので報告する.本腫瘍は血管のあるところならどこにでも発生しうる血管原性腫瘍で比較的稀なものである.更に腹膜後隙発生例は腫瘍自体がかなり大きくならないと発見されにくく,また豊富な血管を有する為完全摘出が手技的に難しいこと,そして局所再発,肝,肺転移をきたしやすく臨床的に悪性である点など診断,治療上問題の多い腫瘍である.症状としては腫瘍の触知ないしは周辺臓器の圧迫症状として発見されることが多い.層診断には他の後腹膜腫瘍と同様に超音波検査, CT, 腎盂造影,注腸等を施行するが,特徴的な所見を得るには血管造影が特に有用である.治療は当然のことながら完全摘出を原則とするが腫瘍の性格上大出血をきたしやすいとの報告が多い.我々は術前にゼロフォームによるエンボリゼーションを行い術中の出血をコントロールするとともに,積極的に癒着した尿管と膀胱の一部を合併切除し完全摘出を行い得た.しかし本腫瘍は組織学的には良性でなおかつ完全摘出術が行いえた症例でも肝.肺への遠隔転移を起こすものがある.原因として術中操作による腫瘍の血行転移も考えられるので,この点からも術前のエンボリゼーションは必要であり,手術に際してはいち早く血行を可及的に遮断し悪性腫瘍として細心の注意をはらい愛護的に摘出すぺきものと考えられる.
本症例は術後2年経た現在半年毎の定期検査をうけ再発,転移の徴候なく元気に働いている.

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