日本臨床外科医学会雑誌
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早期乳癌の診断と定義について
浅越 辰男花上 仁中田 宗彦黒澤 努北野 善昭宮川 貞昭青木 明人岡芹 繁夫根本 明久箭本 浩中山 隆市四方 淳一
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1986 年 47 巻 4 号 p. 411-417

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抄録
1978年8月より1985年7月までの7年間に取り扱った原発乳癌症例172例のうち, T0乳癌7例(4%), T0以外の非浸潤癌8例(5%),腫瘍径2cm以内の浸潤癌34例(20%)の合計49例を早期乳癌として,診断上の特徴および早期乳癌の定義に関して検討した.その結果, 1) T0群の5/7 (71%)は血性乳頭分泌を主訴としており, Microdochectomyが診断上有用であった. 2) マンモグラフィー上微小石灰化のみられたT0乳癌が1例あった. 3) T0以外の非浸潤癌の3/8 (38%) は嚢胞内乳癌で,超音波, Pneumocystographyが有用で,他の5例はいずれも長径10mm以内の腫瘤を主訴としていた. 4) 腫瘍径10mm以内の浸潤癌10例と11~20mm群24例の間で,マンモグラフィーの有用性に差はなかった. 5) 腫瘍径2cm以内(T0, T1)でリンパ節転移陽性例が5例あり,腋窩転移リンパ節で発見された1例を除いていずれも長径16mm以上の症例であった. n⊕症例は,早期乳癌の範畴に入らないと考えているので,早期乳癌瘍径15mm以内の浸潤癌と非浸潤癌症例にすべきであると考えられた. 6) 腫瘍径2cm以内の腫瘤の積極的な摘出生検が,早期乳癌症例発見の増加につながると考えられた.
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© 日本臨床外科学会
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