理科教育学研究
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原著論文
粒子概念による物質の三態変化の指導
―経験と理論を統合するコンセプトマップの「ラベル展開」手法の提案―
福田 恒康遠西 昭寿
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2015 年 56 巻 2 号 p. 203-211

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抄録

生徒たちは小学校の学習で水が沸騰しているときと水と氷が共存しているときには, 加熱を続けても温度が変化しないことを知っている。本研究の被験者は, 中学受験の知識としてこのとき熱が状態変化に使われているため, 温度が変化しないことも知っている。しかし, 生徒たちにとっての状態変化は水の視覚的な変化であって, 粒子運動の様態の違いではない。生徒の理解はあくまでも現象的・感覚的な理解であって, 理論的な理解ではない。物質の粒子概念は不可視な概念であるから, 観察や実験では粒子の存在やその運動を確認できないため, 観察事実だけを根拠とした学習では中学校での学習が小学校の理解を超えず, 粒子概念による説明は暗記される。
そこで本研究では, コンセプトマップ(Novak and Gowin, 1984)を使って, 生徒たちに積極的に理論どうしの関係性を認識させ, クワインのホーリズムの科学観(クワイン, 1992)を授業に適応して, 構成される理論体系全体と経験の全体が粒子の熱運動で説明されるとき, 生徒たちが粒子概念を強く確信できると考えた。このために, 本研究ではコンセプトマップにおける「ラベル展開」という手法を用いた。この結果, 生徒たちにホーリスティックな理解やプラグマティックな理解を促すことができた。

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© 2015 一般社団法人 日本理科教育学会
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