日本臨床外科医学会雑誌
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肝動脈内膜剥離,胃十二指腸動脈閉塞を伴った外傷性胆管狭窄の1例
三木 聖夫中田 昭〓吉岡 一夫福田 徹夫平野 穣一
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1987 年 48 巻 2 号 p. 254-261

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抄録
腹部鈍的外傷により,胆管狭窄に加えて,肝動脈系の損傷を伴った極めて稀な1例を経験した.症例は, 30歳の女性で,ハンドル外傷後10日目に発黄し,中部胆管の狭窄,総肝動脈(遠位端)の内膜剥離及び胃十二指腸動脈閉塞を認めた.胆管狭窄は胆嚢外瘻のみにて軽快治癒した.肝動脈の内膜剥離は中枢側に解離が進んだが,特に処置は必要なかった.本例の場合,外力により肝が頭側に偏位され,胆管と肝動脈に長軸方向の張力が加わったことにより,損傷を生じたものと思われた.自験例を含めた過去11例の外傷性胆管狭窄の集計によると,受傷後2週間前後に発黄し,狭窄部位は中部胆管で,外瘻のみにて治癒することが多いという特徴があった.腹部鈍的外傷による肝動脈損傷の症例は,本例が最初の報告であると思われる.
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© 日本臨床外科学会
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