日本臨床外科医学会雑誌
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徐脈を呈した原発性副甲状腺機能亢進症の1治験例
勝木 茂美小田切 治世唐木 芳昭藤巻 雅夫土田 敏博能沢 明宏中野 護山口 節子
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1987 年 48 巻 6 号 p. 816-823

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抄録
慢性膵炎の経過観察中,高Ca血症及び不整な徐脈を指摘され,精査にて原発性副甲状腺機能亢進症と診断され手術となった65歳男性の症例である.術前の心電図でQTの短縮, P波の不整, II, III, aVFにSTの低下を伴った徐脈を認めた. (血清Ca値17.4mg/dl,脈拍数40回/分)腫瘍摘出後,血清Ca値は一過性に1.2mg/dlの上昇を示したが,約5時間半経過後より急速に低下し始め,翌日にはほぼ正常域となった.術後心拍数は改善し,心電図にてQT短縮及びST低下は消失し,洞調律の整脈となった.徐脈の原因としては,高Ca血症による迷走神経,刺激伝導系及び心筋への作用等言われているが,本症例ではアトロピン及び運動負荷による徐脈の改善より迷走神経の関与が,また術後,ワンダリングペースメーカーの改善がみられた事,及び術前後にPQ時間の変化がなかった事から洞旁結節への影響が示唆されるが,詳しい機序については,今後の検討が必要と思われる.
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