抄録
右腋窩腫瘤を主訴として来院した乳房のoccult carcinomaの1例を経験したので,文献的考察を考えて報告する.
われわれの施設におけるoccult carcinomaの頻度は原発乳癌1,100例中1例(0.09%)と稀であった.
患者は44歳女性,右腋窩に約4cm径の腫瘤に気付き当院外科を受診した.腋窩腫瘤の生検を行ったところ,腺癌の転移と診断された.乳房に関する諸検査を行ったが異常はなく,他の全身の検査でも異常を発見できなかった.
そこで乳房のoccult carcinomaを考え右非定型乳切を施行し病理組織学的に検討したところ,外,下(D)領域に8mm大の腫瘤が発見された.病理組織学的にはリンパ球浸潤性髄様癌であった.
諸家の報告にもあるように,乳房に異常を認めないで,腋窩腫瘤を持つ患者に遭遇した場合は,他臓器の原発巣の有無を検索した上で,異常がなければ積極的に乳癌根治術を行うべきと考えられた