抄録
上腸間膜動脈の根部に血栓性閉塞を生じ, midgut necrosisに陥った1症例に対し,大量腸切除を施行し救命することができた.症例は72歳男性で,心窩部激痛で発症し, 14時間後に緊急開腹手術が施行された.腸管は空腸から横行結腸まで壊死に陥り, midgut necrosisと判断されたため,壊死腸管を含めた大量腸管切除が施行された.患者は敗血症などの合併症を乗り切り,現在では人工腸管システムを用いた良好な栄養管理をうけている.上腸間膜動脈の根部閉塞症の治療成績は不良であるが,本症の救命率を向上させるために早期の臨床診断と疑診例に対する積極的な開腹手術が重要である.