日本臨床外科医学会雑誌
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肝内門脈腫瘍塞栓をきたしたAFP産生胃癌の肝転移症例
田中 誠大澤 二郎網 政明東出 俊一玉川 正明伊東 正文白波 瀬功篠田 正昭山田 成一郎
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1988 年 49 巻 1 号 p. 81-87

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抄録
原発巣がsmの早期胃癌でありながら,術後早期に門脈腫瘍塞栓という原発性肝癌と紛らわしい病像を伴った著明な肝転移を来たし,短期間にdown hillの経過をたどったAFP産生胃癌を報告する.
症例は55歳男性,幽門前庭部の胃癌に対し,幽門側胃切除を施行した.病理標本では深達度smの早期胃癌であったがNo.6のリンパ節にくるみ大の転移を認めた.術後6カ月して右季肋部痛を来たし来院したが腹部CTにて肝転移を疑わせる多数のlow density areaを認め,血管造影超音波では原発性肝癌に特徴的と言える門脈腫瘍塞栓像を呈し,その時の血清AFP値でも39,000ng/mlの異常高値を示した.抗癌剤注入用リザーバー留置のため再手術を施行したが,腫瘍浸潤のための肝腫瘍摘出のみに終った.免疫組織染色法(ABC法)にて,初回手術時の胃癌病巣, No.6リンパ節との相関を調べたが,いずれの病巣にもAFPの存在を証明でき,肝腫瘍部は胃癌の転移であると確診し得た.
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