日本重症心身障害学会誌
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一般演題
O-1-B-15 西日本重症心身障害児施設における施設内骨折の実態
−第3報 8年間の検討と骨折予防について−
森下 晉伍澤野 邦彦原 寛道
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2012 年 37 巻 2 号 p. 272

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抄録
はじめに 平成16年度から西日本重症心身障害児施設協議会(以下、西日本協議会)において、施設内骨折症例のアンケート調査を行った。その結果に基づき西日本広報において予防対策の一つとして体位変換、オムツの交換時の介助についての注意を提唱した。今回は第3報として8年間のアンケート結果のまとめと今後の予防対策について報告する。 対象と方法 西日本協議会の全施設に年1回のアンケートを行った。調査対象数は平成16年度56施設5022人から平成23年度63施設6280人に増加している。内容は入所者の大島分類、骨折部位、原因、治療法、抗てんかん薬服用などである。 結果 西日本協議会施設全体としての8年間の年間骨折発生頻度は2.1%から3.2%の間でやや増加傾向が見られた。しかし年齢別骨折発生頻度は20歳以下ではやや減少傾向で2%台、21歳から50歳未満では漸増しているが2%台であるが、それに対して50歳以上は3%から4%台に増加している。部位別は大腿骨、足・足趾、前腕・手の順に骨折が多い。大腿骨骨折の割合は調査開始当初の44%から26%に減少している。運動発達レベル群別に見ると1群寝たきり群は大腿骨骨折が40%から60%を占め、2群座位可能群、3群移動可能群は末梢の骨折が多かった。骨折の原因有りは平均30.0%(25%〜38%)であった。原因有りは1群ではオムツ交換、移乗など介護の問題が多く、3群では転倒、打撲などが多かった。治療法は保存的治療が90%以上であった。骨折者の抗てんかん剤服用者の割合は平均77.4%で母集団の平均65.7%より高かった。 考察 年間骨折発生頻度の増加は高齢化が進行し、50歳以上の入所者が8年間に16%から30%に増えていることが大きな要因と考えられる。重症児者の骨折の原因は骨脆弱性を基盤として多岐にわたっているが、栄養、日光浴、関節拘縮予防のための運動・リハビリ、介護の工夫などに加えて高齢化による骨粗鬆症に対する薬等の対策が必要と思われる。
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