日本臨床外科医学会雑誌
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乳癌手術侵襲の免疫担当細胞に及ぼす影響
中尾 丞澤井 照光石井 俊世栄田 和行野口 恭一
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1988 年 49 巻 12 号 p. 2252-2256

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抄録

定型的乳房切断術前後に,リンパ球数,リンパ球サブセット, PHA幼若化率を測定して,手術侵襲の免疫担当細胞に及ぼす影響の一端をみた.
術前,術後3日目, 7日目, 14日目に採血して,末梢リンパ球数およびリンパ球サブセット(OKT3, OKT4, OKT8, OKIal陽性リンパ球)をそのモノクローナル抗体とフローサイトメトリーにて測定した.またリンパ球幼若化率をEB蛍光法にて測定した.
リンパ球数は3日目迄有意に減少し7日目には回復した.リンパ球各サブセットの比率は有意の変動を示さなかった. OKT3, OKT4, OKT8の絶対数は, 3日目の測定で有意の低下を示し7日目には回復した. PHA幼若化率も3日目の測定で有意の低下を示し, 7日目には回復した.
術後の免疫能の低下は,侵襲に対してホメオスターシスを維持するための生理的な反応で,それ自体は生体に有利な作用であるが,一方担癌体にとっては転移・浸潤の進行につながるおそれもある.癌患者の術後に免疫能の状態を把握して治療にあたることは有益な事である.

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