1988 年 49 巻 12 号 p. 2269-2274
過去10年間に神戸大学第1外科へ入院した消化性潰瘍をシメチジンの出現時期を境として前期と後期に分け,特に難治性潰瘍の変遷につきretrospectiveに検討した.
後期では入院数,手術数ともに半減したが手術率は70%前後で大差なかった.後期は前期に比べ出血における手術率はやや減少し,逆に難治例における手術率がわずかではあるが増加していた.
難治性潰瘍手術例について,その背景因子および形態学的特徴を検討すると,年齢,有併存症率,胃液検査成績などには前,後期でかわりなかったが,前期に比べ後期では女性の占める割合が増し,有潰瘍歴の割合は87%から55%へと低下し,形態的には2cm以上の巨大潰瘍, 3cm以上の線状潰瘍, U1 IVの深い潰瘍の占める割合が増え.反対に多発潰瘍は57.5%から25%に減少していた.