日本臨床外科医学会雑誌
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非機能性上皮小体嚢胞に対する穿刺吸引治療法
田伏 洋治玉置 幸子寺下 史朗上畑 清文柏木 秀夫村上 浩一中塚 久仁英田伏 克惇谷村 弘
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1988 年 49 巻 12 号 p. 2304-2308

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抄録

非機能性上皮小体嚢胞の治療法は,嚢胞の摘出術が一般的である.しかし本症の診断が容易になった現在,穿刺吸引のみにより経過をみることがどの程度有効かを検討するため,嚢胞液の穿刺吸引後の経過について,また,経過を見ていて手術に至った症例では手術操作にいかなる影響を生じるかを検討した. 1982年から1987年までに本症と診断された5例のうち3例はそれぞれ穿刺吸引後2年9カ月, 2年6カ月, 11カ月経て超音波検査にても嚢胞は縮小したままであり, 1例は1カ月後に甲状腺癌の合併のため,手術を施行したが,嚢胞に液の再貯溜を認めなかった.他の1例は穿刺吸引後2カ月ごとに液の再貯溜と症状が生じたため, 5回の穿刺吸引後手術を施行した.手術を施行した2例とも穿刺吸引が手術操作に問題を残す変化は生じていなかった.以上から,本症に対して穿刺吸引により経過をみること,言い換えれば穿刺吸引法は第1選択の治療法としてもよいと考えられる.

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