日本臨床外科医学会雑誌
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Paget病と浸潤性乳管癌の併存した1症例
薦田 烈岡田 節雄田中 聰小林 省二
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1988 年 49 巻 12 号 p. 2316-2321

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抄録

乳頭表皮に限局したPaget病と浸潤性乳管癌の併存した1症例を報告する.患者は52歳女性で, 7年前より左乳頭に徐々に拡大する糜爛を認め, 1カ月前より同側の乳房に腫瘤を認めている.腫瘤の摘出生検により乳癌(乳頭腺管癌)の診断を得たために, Pateyの手術を施行した.病理組織学的検査では, Paget病の病変は乳頭表皮に限局し,終末部の乳管には腫瘍浸潤を認めなかった.また,腋窩リンパ節に転移を認めなかった.さらに, Paget病の病変と乳頭から約3cm離れて存在する腫瘤との間を組織学的に検索した結果,両者の間には関連を認めなかった. Paget病は,乳頭乳輪を含めた乳腺の楔状切除に腋窩リンパ節郭清を加えた縮小手術で治癒可能と考えるが,病変が乳頭表皮に限局する場合においても,併存する乳腺腫瘍の存在を疑い,術前術後に精密な検索を行うことが必要と考える.

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