1988 年 49 巻 12 号 p. 2322-2326
乳腺腫瘤を主訴とした,乳腺原発悪性リンパ腫白血病化の1症例を報告する.症例は20歳,女性, 4カ月前より左乳腺腫瘤を自覚し,来院時4×6cm,硬度硬,境界明瞭,可動性良好,エコーでは境界一部不明瞭な充実性腫瘤で,内部エコー強,粗,不均一で,臨床的にはPhyllodes tumorが考えられた.腫瘤摘出術を施行したところ,病理組織学的には,乳管を取り囲んで大小不同のリンパ濾胞が形成され,小型リンパ球様腫瘍細胞の中に大型の切れ込み核細胞(cleaved cell)が認められ, mitosisも多かった.また末梢血および骨髄中にも異常リンパ球が認められ,末梢血の電顕像でB細胞系のリンパ腫細胞と同定され,乳腺原発悪性濾胞性リンパ腫,中細胞型, RappaportのM. L., por, lymphocytic, nodularと診断した.診断確定後11カ月で死亡した.乳腺悪性リンパ腫は乳癌の0.17%と報告され,自験でも1/229 (0.43%)ときわめてまれであった.