1988 年 49 巻 12 号 p. 2341-2345
原発性小腸癌は他の消化管の癌腫に比べ稀な疾患であり,消化管病変の診断技術が進歩した現在でも診断が困難で,イレウスあるいは急性腹症などの診断で開腹手術を受けてはじめて診断される場合が多い.最近,原発小腸癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は65歳の女性で急性虫垂炎の手術の既往があり,普段より便秘気味で時々腹痛があったが排便により軽快していたという.来院2日前より排便なく下腹部痛・腹部膨満が著明となったために受診.入院にて保存的治療を行い一時改善するも再度イレウス症状が出現したため手術に踏み切った.回盲弁から10cm口側の回腸に腫瘍による全周性の狭窄を認め,摘出標本の病理組織学検索では高分化腺癌であった.