日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
直腸S状部に原発した腺扁平上皮癌の1例
廣本 雅之津嶋 秀史高橋 正人日下部 輝夫
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 49 巻 12 号 p. 2376-2381

詳細
抄録

直腸S状部に原発した腺扁平上皮癌を経験したので,本邦報告例とともに若干の臨床病理学的検討を加え報告する.
症例は83歳,男性.下痢を主訴に近医受診するもしだいに食欲低下,体重減少も現れたため当院入院.下部消化管造影,内視鏡により直腸S状部の結腸癌の診断にてS状結腸直腸切除,人工肛門造設術を行った.摘出腫瘍は8.0×10.0cmのほぼ全周性のBorrmann 1型腫瘤で,病理組織学的には高分化型腺癌と中分化型扁平上皮癌の混在した腺扁平上皮癌であった.
大腸の腺扁平上皮癌は極めてまれであり,本例を含め現在まで本邦で28例の報告を数えるのみである.検討するに若年者傾向,女性,上行結腸, Borrmann 2型, ssまたはs(+)の症例に多くみられ,扁平上皮癌中心型が多い.組織発生機転については定説はないが,腺癌細胞の扁平上皮化生説を支持したいと考える.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top