日本臨床外科医学会雑誌
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乳糜腹水を来した特発性小腸部分拡張症の1例
向井 友一郎安岡 俊介寺師 弘泰
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1990 年 51 巻 3 号 p. 527-530

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抄録

特発性小腸部分拡張症は,現在まで文献的には43例の報告が認められたに過ぎず,特に成人例は5例の報告が認められるに過ぎないきわめて稀な疾患である.われわれは急性腹症にて発症し,乳糜腹水を来した特発性小腸部分拡張症を経験したので報告する.
症例は右下腹部痛で来院した18歳の男性である.急性虫垂炎を疑い開腹したところ,虫垂の炎症は乏しく,乳糜腹水,及び回腸の拡張を認めた.回腸は拡張部で捻転しており,同部の腸管壁,及び腸間膜のリンパ管内に透見されるリンパ液の鬱滞と漏出が認められ,乳糜腹水の原因と考えられた.手術では,虫垂切除と腸管の捻転の整復を行った.術後腸透視にて拡張腸管は認められるものの,特に症状なく経過している.

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