日本臨床外科医学会雑誌
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結腸癌による空腸結腸瘻の1例
本邦報告43例の検討
福田 宏嗣荻野 信夫松宮 護郎仲原 正明大口 善郎大下 征夫高尾 哲人山根 哲実桐本 孝次
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1990 年 51 巻 3 号 p. 557-561

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抄録

症例は,75歳の女性.下腹部腫瘤と摂食後の下痢を主訴として来診した.注腸検査で横行結腸に潰瘍性病変と同部位から空腸への瘻孔の形成を認めた.空腸結腸瘻を形成した横行結腸癌と診断し,横行結腸切除及び瘻孔部を含む空腸部分切除術を施行した.病理組織学的には粘液癌を含む高分化腺癌で,stage III [si, n (-), HO, PO, M (-)]であった.術後1年6ヵ月経た現在,再発の徴候は認めない.
結腸癌による空腸結腸瘻形成例は,非常に稀である.現在まで,本邦では自験例を含めて僅かに5例の報告があるに過ぎない.結腸癌による消化管内瘻形成例は,隣接臓器への浸潤型であるにもかかわらず,肝転移,腹膜播種,リンパ節転移を呈することが少ない.従って,内瘻を形成した消化管を含め広範囲に切除を行うことにより,結腸癌の治癒的切除が期待される.

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