日本臨床外科医学会雑誌
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外傷性中心性肝破裂の4例
治療方針についての検討
河野 哲夫山本 正之飯室 勇二井上 慎吾吉岡 正和飯塚 秀彦三浦 和夫菅原 克彦
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1990 年 51 巻 5 号 p. 1019-1025

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抄録

最近経験した外傷性中心性肝破裂4例に対しその治療方針について検討した.症例は9歳から48歳,男3例女1例であり,受傷原因は交通事故であった.診断,外傷後の経過観察はCT, USで行った.3例はショック状態に陥ることなく保存的治療で軽快した.1例は中心性肝破裂以外に外側,内側区域に部分的離断がみられショック状態を呈したので緊急開腹した.外側区域部分切除と内側区域裂傷部縫合により腹腔への出血を防止し肝内血腫は経過観察とした.しかし術直後に肝内血腫が破裂したため再開腹し肝部分切除術を施行した.術後11日目に内側区域内血腫が外側区城切離端に破綻したが,2回目と同様の手術を施行し順調に回復した.外傷性中心性肝破裂に対して生命徴候が正常である限り保存的治療が第一選択であるが,大血管と交通がある場合には早期肝破裂を,胆汁漏出が残る場合には遅発性肝破裂を起こす可能性があり,血圧,脈拍などの生命徴候およびCT, USによる厳重な経過観察が必要である.

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