日本臨床外科医学会雑誌
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多発貯留嚢胞・膵石を合併した慢性アルコール性膵炎の1手術例
中谷 公一笠原 洋浦田 尚巳今野 元博森下 明彦上田 省三園部 鳴海中尾 稀一竹本 雅彦山田 幸和田中 茂久山 健
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1990 年 51 巻 5 号 p. 1047-1051

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抄録

症例は大量飲酒歴のある58歳男性で,画像診断で多発膵嚢胞と膵石がみられた.慢性膵炎と診断し,1989年1月9日に開腹した.手術においては膵機能保全を目的とした.5コの嚢胞を認め,膵尾部脾切除で2コの嚢胞を切除した.主膵管は長軸方向に切開し,同管内の広範囲の膵石除去に続いてRoux-Y脚を用いて膵空腸吻合を行った.膵頭部から体部の2コの嚢胞も同吻合に含めた.膵頭部残存嚢胞には内面上皮を硬化するために95%エタノール注入を行った.組織学的に膵管由来の貯留嚢胞と慢性膵炎と診断された.患者は胃潰瘍出血で再手術を受けた.その胃切除時に膵頭部のエタノール注入嚢胞はすでに縮小していたが,膵鉤部に他の嚢胞がみられ,これもエタノール注入で処置した.患者はさらに小腸イレウスのため開腹したが,その時にはこれらの嚢胞も消失していた.術後10ヵ月でCT上嚢胞消失がみられている.

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