日本臨床外科医学会雑誌
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脾動脈瘤膵管内破裂の1治験例
赤坂 義和中浜 貴行広田 有玉置 久雄谷川 寛自
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キーワード: 脾動脈瘤, 膵管内破裂
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1990 年 51 巻 5 号 p. 1057-1062

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抄録

大量下血を来した脾動脈瘤膵管内破裂の1例を経験したので報告する.症例は55歳男性,下血を主訴として来院.一般検血ではRBC 258×104/mm3, Hb 4.4g/dl, Hct 17.8%と著明な貧血を認めたが,上部消化管内視鏡検査,小腸造影及び注腸では出血源を思わせる所見を認めなかった.膵管造影で膵尾部に28×20mmの造影剤の貯留を認め,腹部血管造影では,脾動脈分岐部より3cm末梢に13×11mmの動脈瘤を認めたが,extravasationや膵に腫瘍濃染像は認めなかった.脾動脈瘤及び膵嚢胞性腫瘍の術前診断にて,脾動脈瘤を含め脾合併膵体尾部切除を施行.摘出標本では,嚢胞性腫瘍はなく脾動脈は嚢状に膵内にむかって拡張しその内腔に血栓を入れ壁の一部は極めて薄く,膵管との交通が認められた.術後経過良好.
脾動脈瘤の膵管内破裂例は現在まで本邦では8例の報告をみるにすぎず,極めてまれな疾患であるが,原因不明の消化管出血に対しては本症も念頭において検索すべきである.

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