1990 年 51 巻 5 号 p. 1063-1067
腎癌による転移性甲状腺癌の2例を経験した.病理学的診断は2例とも明細胞癌であり,サイログロブリンの免疫染色で甲状腺原発の明細胞癌と鑑別が可能であった.腎癌の甲状腺転移には転移巣の摘除で良好な予後の得られる症例がある.
症例1は71歳の女性で甲状腺左葉に結節を有していた.甲状腺の手術後,転移性の明細胞癌と診断され,原発巣は左腎癌と判明した.左腎摘除を行い,その後3年間再発なく良好に経過している.
症例2は69歳の男性で甲状腺右葉に結節を有していた.9年前に腎癌で右腎摘除を施行していた.甲状腺右葉切除を行い,腎癌の甲状腺転移と確認した.3年後腎癌の全身転移にて死亡した