日本臨床外科医学会雑誌
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下行胸大動脈瘤・胸腹大動脈瘤手術時のBio-pumpによる部分左心バイパスとEvoked Spinal Potentialモニターの有用性
錦見 尚道黒柳 裕田口 雅勝井尾 昭典向山 博夫桜井 恒久矢野 孝塩野谷 恵彦
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1990 年 51 巻 5 号 p. 869-874

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抄録

1988年4月から11月までの8ヵ月間に名古屋大学第1外科において,補助手段としてBio-pumpによる部分左心バイパスを用いた下行胸・胸腹大動脈瘤切除症例は6例で,全例待期手術例であった.体重1kgあたり0.5~1.0mgのヘパリンを投与し,ACT値を200秒以上に保ち左房脱血・大腿ないしは腸骨動脈送血で左心バイパスを行った.バイパス時間は90分から240分であり,平均足背動脈圧を60mmHgに保つように調節した結果,流量は平均1,000~2,400ml/minとなった.バイパス中の尿量は40~513ml/hrを維持でき,術後の腎不全はみられなかった.バイパス中の体温低下を防ぐため,ブランケットの加温装置を利用できる簡便な熱交換部分の付属した回路を開発し,有効であった.脊髄麻痺防止のために脊髄誘発電位をモニターし,6例中3例に変化がみられた.2例は手術操作による低血圧に伴う一時的なもので1例では永続的な電位低下がみられたが,術後に脊髄麻痺を生じたものはなかった.

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