1988年4月から11月までの8ヵ月間に名古屋大学第1外科において,補助手段としてBio-pumpによる部分左心バイパスを用いた下行胸・胸腹大動脈瘤切除症例は6例で,全例待期手術例であった.体重1kgあたり0.5~1.0mgのヘパリンを投与し,ACT値を200秒以上に保ち左房脱血・大腿ないしは腸骨動脈送血で左心バイパスを行った.バイパス時間は90分から240分であり,平均足背動脈圧を60mmHgに保つように調節した結果,流量は平均1,000~2,400ml/minとなった.バイパス中の尿量は40~513ml/hrを維持でき,術後の腎不全はみられなかった.バイパス中の体温低下を防ぐため,ブランケットの加温装置を利用できる簡便な熱交換部分の付属した回路を開発し,有効であった.脊髄麻痺防止のために脊髄誘発電位をモニターし,6例中3例に変化がみられた.2例は手術操作による低血圧に伴う一時的なもので1例では永続的な電位低下がみられたが,術後に脊髄麻痺を生じたものはなかった.