抄録
CA19-9は消化器系癌において陽性率が高いといわれているが,甲状腺癌において高値を示した報告はまれである.最近,血清CA19-9値が高値を示した甲状腺癌を経験し, PAP法で組織学的に腫瘍組織からのCA19-9産生を証明したので報告する.
症例は73歳の男性で,右頸部腫瘤を主訴にて来院し,針生検にて乳頭癌との診断を得た.腫瘍マーカーは血清CA19-9値のみが200U/mlと高値を示した.消化器系の探索を行ったが異常を認めず,頸部CT,頸部DSA,甲状腺シンチグラムより,甲状腺癌あるいは甲状腺癌のリンパ節転移と診断し,甲状腺右葉切除術,右頸部腫瘤を含めた,リンパ節郭清術を施行した.
摘出標本を, PAP法を用いてCA19-9染色を行ったところ,腫瘍細胞の染色を確認し, CA19-9の産生を証明し得た.