1991 年 52 巻 4 号 p. 770-775
亜急性甲状腺炎の診断は,典型的な症状を呈する症例では容易であるが,甲状腺部の圧痛や急性炎症症状を欠く症例では,他の甲状腺疾患との鑑別に難渋する場合も少なくない.最近,われわれは初診時,甲状腺部の圧痛や急性炎症症状を欠くため,甲状腺癌と診断した2例の亜急性甲状腺炎を経験したので報告する.これらの症例は,いずれも甲状腺に腫瘤を形成し,初診時の触診および超音波断層像からは,甲状腺癌と鑑別できなかったが,経過観察中に腫瘤の変化を認め,診断を確立しえたもので,その診断には,腫瘤の触診所見および超音波断層像における経時的変化の追跡が有用であった.