抄録
腰部ヘルニアは,腰部の解剖学的低抗減弱部位である上腰三角部(Grynfeltt-Lesshaft triangle)あるいは下腰三角部(Petit triangle)より発生する稀なヘルニアである.最近われわれは上腰ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.
症例は72歳,男性,左腰背部腫瘤を主訴として来院.入院時所見では左第12肋骨下に径約9×7×2cmの腹圧で増強される腫瘤をみとめた. CT検査所見は腰背部筋の欠損部分と,それより皮下に突出する腎周囲脂肪組織を認め,術前診断に有用であった.手術所見では上腰部三角部に径1.5cmの円形欠損を認め, 4×3×3cmの脂肪組織を内容としていた.手術はヘルニア門を直接縫合閉鎖し,内腹斜筋と脊柱起立筋を縫合して補強した.術後経過は順調で現在まで再発所見は認めていない.
本邦に於ける腰部ヘルニアの報告例は16例と極めて稀であり,自験例は上腰部ヘルニアとしては5例目であると考えられた.