抄録
下肢の閉塞性動脈疾患は臨床上少なくないが動脈低形成を基盤に持つものは稀である.われわれは,腎動脈以下の腹部大動脈の低形成に起因したと思われる左外腸骨動脈閉塞症を経験した.
症例は41歳女性.左下肢の虚血症状にて受診し,血管造影にて左外腸骨動脈閉塞,及び周囲血管の低形成を認めた.子宮筋腫を合併していたため,腟式子宮全摘と総腸骨大腿動脈間バイパス術を同時に施行した.術後経過は良好であり現在に至るまで下肢の虚血症状は改善している.
下部大動脈系の低形成の成因は先天的な発生異常が最も示唆されており,若年女性に多いとされる.従って治療法も必要最小限のバイパス術が妥当と考えられた.