抄録
1991年4月までに教室で経験した肝内結石症症例53例を対象として,手術成績および予後について検討した.その結果の要約は, 1) 左右両葉型症例では多次手術例が多かった, 2) 術後の結石遺残率は片葉型に比べ,両葉型症例で高かった, 3) 経過中に胆道癌が発生した症例を2例経験し,これらは全例死亡した, 4) 多次手術症例であっても,術後に積極的な内視鏡的截石術が施行された症例は予後良好であったことなどである.
以上より,本症の治療に際しては初回手術時の正確な胆道病変の診断により多次手術を防止するとともに,術後やむなく遺残結石となる場合には,術後積極的に内視鏡的截石術を施行する必要があると考える.なお,術後胆道癌発生の診断については,かなり困難な場合が想定されるが,今回のretrospective studyからは胆道造影等による厳密なcheckの上でfollow upすべきであると考えられた.