日本臨床外科医学会雑誌
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食道アカラシアに合併した食道・胆嚢重複癌の1例
渡部 誠一郎古川 正人中田 俊則酒井 敦草野 敏臣林 〓欽田代 和則大井 明山田 雅史藤井 秀治
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2971-2975

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抄録

食道アカラシア合併食道・胆嚢の同時性重複癌の1例を経験した.症例は73歳の男性.約50年間,食物の通過障害があったが放置していたところ,突然の吐血にて来院した.内視鏡,食道造影にて,食道アカラシアに伴う食道癌が発見された.食道癌は, Imに存在する潰瘍型で,アカラシアは, FIII型であった.ただちに食道亜全摘術が行われ,胃管にて再建した.病理組織学的に,癌は,深達度mpの扁平上皮癌で,非癌部の中・下部食道のAuerbach神経叢には正常の神経節細胞は消失していた.術後6カ月目の腹部エコーにて,胆嚢に隆起性病変が認められ, 8カ月目に胆嚢癌の診断にて拡大胆嚢摘出術を行った.病理学的に腺扁平上皮癌であった.
食道アカラシア合併食道癌の報告は,本邦では自験例が53例目にあたると思われるが,さらに胆嚢癌との重複例は,著者らが検索した限りでは見あたらず,非常に稀な1例であると思われた.

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