日本臨床外科医学会雑誌
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腸閉塞を来した小腸結核の1例
須崎 真倉田 稔酒井 秀精加藤 憲治北川 真人
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キーワード: 小腸結核, 腸閉塞
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1992 年 53 巻 12 号 p. 3001-3004

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抄録

症例は56歳男性,腹痛を主訴に来院.腹部単純X線撮影で腸閉塞の所見を認めたため,ロングチューブを挿入した.小腸造影で回腸に辺縁の比較的滑らかな7cmの狭窄像を認めた.注腸造影では異常所見を認めず,回腸の病変が単発であることから小腸腫瘍を疑い手術を施行した.開腹すると回腸未端より90cm口側の小腸の漿膜面の一部に乳白色の鶏卵大の腫瘤が認められ,腸間膜に小指頭大の柔らかいリンパ節を数個認め,腫瘤およびリンパ節を含めて約30cmの回腸を切除した.摘出標本では小腸壁は著明に肥厚し,長軸に直角の深い下掘れ潰瘍を認めた.組織学的には潰瘍はU1 IIIで,ラングハンス型巨細胞と乾酪性肉芽腫を認めた.リンパ節にも同様の所見を認め,小腸結核と診断された.本症例の胸部単純X線写真には肺結核を疑わせる所見はなく,ツベルクリン反応も陰性であった.最近の傾向として腸結核症例の胸部単純X線写真では異常を認めない場合が多い.

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