日本臨床外科医学会雑誌
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悪性胃平滑筋芽細胞腫の1手術例
河本 知二田中 聰前場 隆志山本 眞也久米川 啓山根 雅彦小林 省二森 誠治岩井 隆行
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1992 年 53 巻 12 号 p. 2995-3000

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抄録

患者は42歳の女性で,主訴は上腹部腫瘤と腹痛であった. X線検査で胃小彎側の圧排像を認めたが,内視鏡検査では粘膜面の変化はなく,腫瘍マーカーに異常値も認めなかった.超音波, CT, MRI検査上,上腹部に内部構造の不均一な10cm径の腫瘤が存在し,平滑筋肉腫の診断のもとにリンパ節郭清とともに胃全摘術を行った.リンパ節転移はなかったが,組織学的には悪性胃平滑筋芽細胞腫と診断された.術後4カ月目のCTで膵尾部上縁に転移巣と考えられる腫瘤が出現して急速に増大し,術後5カ月目の再開腹によって肝外側区域にも同様の再発巣を認め,膵体尾部・脾合併切除および肝部分切除を施行した.
本腫瘍は癌腫に比べて悪性度が低く,縮小手術で良いという意見もあるが,胃癌に準じたリンパ節郭清を含んだ術式を選択し,また本症例のような核分裂像が高頻度で悪性度の高いものは何らかの補助化学療法も必要ではないかと考える.

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