日本臨床外科医学会雑誌
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消化性潰瘍手術例の推移に関する検討
清水 哲岸本 宏之池田 貢川口 廣樹中村 広繁山根 祥晃
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1992 年 53 巻 3 号 p. 518-522

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抄録

1989年までの10年間に当科で経験した消化性潰瘍手術例を対象として,その推移に関して検討を加えた.対象症例は170例で,疾患別では胃潰瘍が117例(68.8%),十二指腸潰瘍が45例(26.5%),併存潰瘍が8例(4.7%)の順であった.対象を前期及び後期の5年間に分けると,各疾患別の頻度に変化はなかったが,手術総数は難治例の激減(p<0.01)に伴い前期の103例から後期では67例と35.0%の減少がみられ,出血例および穿孔例は逆に増加(p<0.01~0.05)を認めた.緊急手術例は後期でその割合のみならず絶対数の増加(p<0.01)がみられ,特に胃潰瘍に対する緊急手術の増加が目立った.緊急手術例の増加の要因として,初発潰瘍症例の増加傾向が指摘され,それらの高齢化も同時にみられた.後期では緊急手術例の病悩期間の長期化傾向がみられた.以上より,特に初発の比較的高齢な消化性潰瘍に対しては,外科的治療を念頭においた注意深い経過観察が必要と考えられた.

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