1992 年 53 巻 3 号 p. 528-536
胃癌全摘症例を無作為に摘脾群(10例)と摘脾+脾自家移植群(9例)の2群に分け移植脾の生着再生状況および摘脾群と比べてどのような有用性があるかについて血清学的因子を中心に検討した.移植方法は脾の30~40%量を小組織片として主に横行結腸間膜,小腸間膜内に分散移植した.術後重篤な合併症はみられなかった. 99mTc-熱処理赤血球を用いた脾シンチでは3カ月以上経過例8例中6例(75%)に陽性所見が得られた.術後血小板数,免疫グロブリン,細胞性免疫パラメーター(T3, T4, T8, T4/T8, NK活性)の推移に関しては両群間に有意差はみられず,移植脾の血清学的因子に与える影響については明らかにすることができなかった.しかし本術式は胃癌手術の根治性を満足し,かつ脾再生も得られたことから胃癌の根治術式(胃全摘+摘脾+脾移植術)の一つとなりえる可能性が示唆された.