1992 年 53 巻 3 号 p. 537-542
最近10年間に教室で経験した大腸他臓器重複癌40例を対象に臨床的検討を行った.大腸他臓器重複癌40例は同時期の大腸癌手術症例835例の4.8%に相当し,同時性11,異時性27例,同・異時性2例であり,重複臓器は胃が53.5%と最も多かった.大腸癌全体に比較し,男性に多く,年齢が高く,癌家族歴陽性症例が多い傾向にあった.大腸癌が切除された32例については単発切除大腸癌と比較したが,占居部位,肉眼型,組織型において差は認められず,壁深達度や進行度についてはむしろ単発切除大腸癌のほうが進行していた.しかし,重複癌全体の累積5年生存率は34.0%,大腸癌と他臓器癌のいずれも切除しえた症例においても39.5%であり,単発切除大腸癌(63.6%)より有意に低かった.重複癌の予後を向上させるには,同時性では他臓器癌,特に胃癌の治療成績の向上に努め,異時性他臓器癌先行例では第2癌である大腸癌を早期に発見することが重要であると思われた.