思春期前で血性乳頭分泌を伴った女性化乳房症を経験したので報告する.症例は1歳男子,右乳腺腫瘤,血性乳頭分泌を主訴として来院,分娩授乳歴に異常なく,発育正常,外性器に異常を認めなかった.右乳輪下に青く透見され,弾性軟,可動性良好,境界明瞭,表面平滑の1.7×1.4cmの腫瘤を触知した.血清ホルモン検査では, LH, FSH, Prolactin, Testosterone, Estradiol, Progesteroneとも正常であった.血性乳頭分泌が持続するため腫瘤摘出術を施行し,病理組織学的所見で拡張した乳管と軽度に浮腫上の間質組織が乳管の周囲にみられ,女性化乳房と診断した.思春期前女性化乳房症は稀であり,その発生要因として先天異常,新生物などが報告されているが,本症例は発生要因は見当らず,特発性と診断した.また,血性乳頭分泌を伴った報告はほとんどなく,本症例は病理組織学的に意義があると考えられた.