1992 年 53 巻 3 号 p. 571-575
乳癌の手術後30年目に再発をきたした1例を経験した.症例は73歳,女性. 1960年4月, 43歳時に右乳癌にて非定型的乳房切断術を受けた. 1990年2月に右腋窩腫瘤を主訴に来院した.来院時, 5×4cmの可動性のない弾性硬の腫瘤を触知し,血清NCC-ST-439値が220u/mlと高値であった. 1990年4月4日腫瘍摘出術施行.腫瘍は5×4×3cm大,充実性で,組織学的には腺癌よりなり,リンパ節組織,乳腺組織は認められず,免疫組織化学的にα1-ラクトアルブミン, DF-3, 115D8およびNCC-ST-439が陽性であった.さらに, DCC法による腫瘍組織のエストロゲンレセプターが陽性であり,臨床的に他臓器に原発巣と考えられる病変は認められなかったことから乳癌の腋窩リンパ節転移と考えられた.腋窩腫瘍摘出術および腋窩への放射線照射後, 11カ月を経過し,再発徴候は認められず,血清NCC-ST-439値は2.7u/mlと正常範囲内にある.