Recklinghausen病は,皮膚に多発する神経線維腫とCafé au lait spotsと呼ばれる色素斑を特徴とする遺伝性疾患であり,悪性腫瘍の合併がしばしば見られるが,乳癌との合併は比較的少ない.今回われわれは, R病に乳癌の合併をみた1治験例を経験したので報告する.症例は, 46歳女性.左乳腺腺瘤(浸出液を伴う)を主訴に当科受診,左腋窩リンパ節転移,胸壁浸潤および多発骨転移も認め, T4cN1bM1 Stage IVの進行乳癌と診断.抗癌剤,ホルモン剤の術前経口投与にて,切除可能の状態まで改善させてから,左定乳切,両側卵摘を施行した.文献上, R病と合併した乳癌は, Stege II以上の進行癌であることがほとんどである.これは,体表に神経線維腫が多発しており,発見が遅れるのが原因の一つであると思われた.さらに進行乳癌に対する術前ホルモン・化学療法の有効性を示唆する症例と思われた.