日本臨床外科医学会雑誌
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肝腫瘍と鑑別が困難であった横隔膜線維腫症の1例
鈴木 弘治宮崎 卓哉笠原 彰夫奥川 保森永 聡一郎野口 芳一山本 裕司今田 敏夫天野 富薫Jiro KONDO松本 昭彦川口 忠彦
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1992 年 53 巻 3 号 p. 599-604

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抄録

原発性横隔膜腫瘍は非常に稀な疾患のためもあり,近隣臓器の腫瘍との鑑別診断に難渋することが多い.
今回,われわれは肝腫瘍との鑑別が困難であった横隔膜線維腫症を経験したので報告する.
患者は15歳男性.右季肋部腫瘤を自覚し来院した.胸部X線撮影では右横隔膜の軽度挙上を認め,腹部超音波, CT,血管造影などの諸検査にて肝腫瘍を疑い開腹手術を施行した.腫瘍は右横隔膜から発生し,主に腹腔に突出し肝を圧排していたが癒着や浸潤はなかった.腫瘍は前方では横隔膜付着部まで達していたので横隔膜,胸壁と共に切除した.
切除標本は大きさ16×12.5×8cm,重さ640gであった.組織学的には,紡錘細胞と膠原線維の束状配列をしめす増殖で,線維腫症と診断した.
横隔膜腫瘍の本邦報告例53例を集計したところ,横隔膜線維腫症は1例のみであった.

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