1992 年 53 巻 3 号 p. 605-610
甲状腺癌を合併した頸部食道癌の2例を経験した.
2例とも中年女性,食道癌はstage IVの進行癌であった.また2例とも同時性重複癌であるが, 1例は6年前より前頸部腫瘤に気付いており,甲状腺癌発生が食道癌発生よりも数年先行しているように思われた.
食道と甲状腺の重複癌は少なく,自験例を含めた詳細な報告10例を検討すると,同時性7例,異時性3例で,男女比は3:7,平均年齢61.7歳であった.また, Stage IVの進行癌が多く予後が悪かった.異時性重複癌3例は,全例第一癌が甲状腺癌であり,食道癌発生までの期間が約6年, 3例中2例は頸部食道癌であった.また, 3例とも甲状腺癌治療として放射線照射を受けており,リンパ節結核の治療として放射線照射を受けた自験例の1例を含め放射線誘発癌の可能性が示唆された.