1992 年 53 巻 3 号 p. 634-638
Dieulafoy潰瘍は元来胃の病変として報告されたものであり,空腸における報告は極めて稀である.今回空腸Dieulafoy潰瘍症例を経験したので,手術時に行った出血部位同定のための工夫とともに報告する.症例は39歳,女性.腹痛と大量下血を主訴として入院.緊急腹部血管造影により空腸第一枝領域の出血と診断.一時的止血を得るためのTAE施行後に手術施行. TAEに用いた金属コイルを指標に術中X線撮影を行って出血部位を同定.同部の空腸壁楔状切除を行った.
切除標本では,微小な粘膜の欠損と血管の露出とが認められた.病理組織学的には粘膜下に中等大の蛇行した動脈が認められ,この血管の破綻による出血と判断,空腸Dieulafoy潰瘍と診断された.