1992 年 53 巻 3 号 p. 653-656
S状結腸癌の診断で開腹手術を行い,手術中,空腸癌が発見された同時性重複癌の症例を報告した.症例は56歳の男性.健康診断にて便潜血反応陽性と軽度の貧血が認められた.精密検査によってS状結腸癌が発見され,更に手術時トライツ靱帯から約10cmの空腸に癌が認められた. S状結腸癌は骨盤腔腹膜,左尿管への浸潤性転移があったためS状結腸の姑息的切除を行った. II型の癌で,組織型は高分化型管状腺癌であった.空腸癌は3×4cm大の潰瘍型で,組織型は高分化型管状乳頭腺癌であった.臨床症状に乏しいとされている原発性小腸癌がS状結腸癌の手術を契機として発見されたことにより,術中の腹腔内検索の重要性が示唆されたので報告した.