1992 年 53 巻 3 号 p. 657-661
後腹膜炎は大腸などの消化管や腎に起因する各種疾患の術後に生じることが多い.今回直腸穿孔から直腸周囲膿瘍を形成し,漸次後腹膜腔から胸部,頸部,縦隔へと炎症が波及し,胸部皮下気腫で発見された後腹膜炎の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
症例は57歳,男性で会陰部痛と全身倦怠感を主訴に来院し,胸部X線写真で皮下気腫を認めた. CTで頸部から縦隔,胸腹壁,後腹膜腔,直腸周囲におよぶ,内部にガスを含む膿瘍を認め,抗生物質の投与と,ドレナージ術により救命した.
後腹膜炎は蜂窩織炎状に急速に拡大進展しやすく,また消化管穿孔に起因する場合は嫌気性菌とグラム陰性桿菌の混合感染になることが多い.そのため抗生物質に抵抗を示し,予後不良なことも多く,早期発見と早期の適切な治療が肝要であると考えられた.