1992 年 53 巻 3 号 p. 671-675
症例は44歳女性で体格中等度.下腹部痛を主訴として来院した.注腸透視,下部消化管内視鏡検査を施行したところ肛門輪より約5cm,歯状線より約1cm口側に乳頭状腫瘤を有す直腸偏平隆起性病変を認めた.生検結果はgroup V腺癌で周囲に比較的幅広い腺腫が認められたために内視鏡的ポリペクトミーは不可能と判断され手術的治療を施行した.手術方法は肛門括約筋温存術式のうち腫瘍を直視下に直腸切離が可能な重積手術が選択され同時に横行結腸にcovering colostomyを造設した.結腸肛門吻合部に縫合不全が無い事が確認された後初回手術49日目に人工肛門を含む横行結腸切除術を施行した.以後の排便機能は良好で1日の排便回数が2~3回に安定した時点で退院となった.