日本臨床外科医学会雑誌
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胃全摘術後10年目に再発した食道静脈瘤出血に対する空腸静脈枝腎静脈シャント手術の試み
塚田 一博清水 武昭吉田 奎介長谷川 滋武藤 輝一
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1992 年 53 巻 3 号 p. 676-679

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抄録

47歳,男性.食道静脈瘤出血に対して胃全摘術が施行されている.その術後10年目の昭和58年食道空腸吻合部から食道にかけての静脈瘤出血を来した. 5%エタノールアミンオレイトによる硬化療法を繰り返すも出血をくりかえすため,輸入脚の離断とつり上げ空腸の静脈の結紮術を行い一時的な止血を得た.さらに再出血を来したためつり上げ空腸の静脈枝と腎静脈とのシャント術を施行.術後硬化療法を追加した.平成元年4月筋萎縮性側索硬化症による呼吸不全にて死亡したが剖検にてシャントの開存が確認された.経過中脳症は認められなかった.食道静脈瘤症例に対する胃全摘術は出来るだけ避けるべき術式と考えるが,胃全摘術後の静脈瘤再発に対してはこの新しい選択的シャント術が有効であると考えられた.

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