1992 年 53 巻 3 号 p. 695-699
症例は66歳女性で全身倦怠感を主訴に来院し,心窩部の巨大な腫瘤を指摘された.腹部computed tomographyにて心窩部中心に15cm×12cm×6cmの内部不均一な腫瘤像を認め,腹部超音波エコー下生検では平滑筋肉腫の診断であった.肝平滑筋肉腫を疑い手術を施行した.腫瘍は肝下面と胃小弯との間に存在し肝・胃壁とは明確に区別され,その表面は凹凸不整,嚢腫状であった.腹腔内に発生する平滑筋肉腫は,まれな疾患であるが,小網原発の平滑筋肉腫は極めてまれである.今回,自験例を含めた本邦報告例14例についての統計的考察および小網原発の根拠に関し若干の文献的考察を加え報告する