1992 年 53 巻 3 号 p. 700-704
排便困難をきたした仙尾部の巨大なmucinous cyst adenomaの1切除例を経験したので報告する.症例は41歳,女性で生直後に腎部腫瘤の摘出術を受けた. 39歳頃より左臀部に緩徐に増大する腫瘤を自覚するようになり,排便困難が出現した.画像診断から再発仙尾部奇形腫を疑った.腫瘍は境界明瞭な1070gの巨大な腫瘍で病理組織学的にmucinous cyst adenomaと診断された. mucinous cyst adenomaは卵巣に比較的多い腫瘍であるが,卵巣以外では後腹膜に発生した報告例があるのみで,仙尾部に発生した報告例はなく,本症例の腫瘍組織発生は興味深い.また腫瘍摘出後の組織欠損は腎部大腿筋膜皮弁を用いて形成を行ったが,この方法は組織欠損を充填するとともに,腫瘍切除,肛門挙筋一部切離によって生じた骨盤底の脆弱性を補強するうえで有用であった.